室内使用に快適なモデルを探す・WHILL


結論から書いてしまうと、室内使用にするならウィルのモデルCが快適だということになる。
先のモデルからウィルの存在自体は知っていたけれど、先代のデザインがどうもあまり好きではなかった。具体的には後輪のあたりに目立つ大きな円形の意匠が施されていて、一瞬それは後輪かカバーに見えるのだが実はタイヤ等とは関係のない「遊びの」デザインだというところ。

僕の最初の職業はグラフィックデザインであって、それまで感覚寄りで生きてきた僕は、よく先輩方に諭されることになった。仕事には線一本にもきちんと説明できる意味と理屈が必要だというわけである。かっこよければいいじゃん、という僕の主張はプロフェッショナルな現場では一度も通じることはなかった。Yさんね、デザインというのは機能だ。かっこいい線とは違う。

僕は三年も経つころにはいっぱしの技術も身につけたつもりで、その後専業のグラフィックデザインをやめてからでも、その考え方は自分を助けてくれていると感じている。だから「かっこよければいいじゃん」に見えるウィルの車いすにはあまり好意を抱くことができなかったのだ。

さて、元々は室内用というより普通のステーションワゴンに積んで出張に行き、出張先でも不自由なく使える電動車いすということで検討をしていた。

初めは折りたたみタイプで重さが20Kg以下を探していたのだが、ほのかに怪しげな車いすしかなく、ウィルの現行車種が分解可能だと知って、いつも頼んでいるディーラーを介して試乗を申し込んだ。確か分解可能な電動車いすは、アルケアコーポレーションにもラインナップがあったような気がする。

ウィルのCは先代モデルをブラッシュアップしたようなデザインだったが、前にテレビ番組で紹介されていた時には肘かけがついておらず、特徴的なコントローラーへ伸びるアームの意匠がやはり「かっこいいからいいじゃん」に見えて初見の印象が良くなかったことを覚えている。

しかしサイトやカタログをあらためて確認してみると、どうやら肘かけは標準装備となったようだ。あるいは以前見たものはテレビ番組の見栄えを考えてわざわざ肘かけを外してあったのかもしれない。そこがまた僕の気に食わない。

だって肘かけが必要ないほど体幹がしっかりしている人なら、そもそも電動車いすがいらないじゃないか。とまあ、内心思うだけならいいのだが、こうやって書いてしまうとただの言いがかりである。

試乗をしてみると、あまり期待していなかった前輪のオムニホイールは、実に室内向きの車輪だということがわかる。室内で電動車いすを使うにあたって一番のストレスは、くるくると方向を変えるキャスター輪だ。狭いところに入っていってバックで戻ろうとすると、キャスターがくるっと逆向きになるので、その際横の壁や柱へぶつかってしまう。

タイヤもぶつかるが、車輪を保持している金属製のアームがぶつかる。これがまあまあの破壊力で、我が家もそこかしこに傷があり、見るたびに心も痛む。決して乱暴に運転しているわけではない。

オムニホイールは車軸線に対して動かないので、曲がるときはもちろんバックに切り替えたとしても左右にぶれない。キャスター特有の車体必要幅が広がってしまう、ということがないのだ。家の中でもう壁や柱や建具にひやひやする必要がない。こんないいことがあるだろうか。

それからもう一つ美点。それはシャシーがかなり頑丈であることだ。あまり語られることがないが、工具を使わず分解できることを考えれば、これはかなり驚愕のエンジニアリングだと思う。外でも乗ったことがあるが車体剛性に不満を感じたことは一度もなく、購入してもう四年になって、いまだに剛性はへたってはいない。

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